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遠い夏の日 第三十五話

電車での帰り道、自分達の街へと帰るときも、二人の手は繋がれていた。

瞬は暗闇の外の景色をただ見つめるばかりで無言だった。

夏生は瞬が今どんなことを考えているのかと思い馳せてみたが、これからの自分達とオキナワでの楽しい出来事しか思い浮かばなかった。

「家まで送っていくよ」

瞬は静かに落ち着いた声で夏生へそう言った。

「うん」

夏生は家に送ってもらえる安心感のなか応えた。

スクーターを押しながら生暖かい海辺の田舎町を二人は横に並びながら歩いた。

「明日、修行式だな」

「うん」

「そしたらもうオキナワなんだよな・・」

「そうオキナワ・・」

「オキナワって、どんなとこなんだろうな・・」

「・・・・・・」

夏生は潮の匂いを微かに鼻の奥でかすめる気がした。

同じ学校に通いながらも存在すらわからない同士が、短時間でこれほどまでに近づくとは二人とも不思議な感じがしていた。

「何か書くもの持ってる?」

瞬は夏生に聞いた。

「あるよ。はい」

夏生はペンとノートの切れ端を渡した。

「これがオレん家の番号だから」

瞬は自宅の電話番号を書いて夏生に渡した。

「じゃ、ワタシも・・」

「いや、いいよ。そっちから電話してよ。番号はその時でいいから」

「ちゃんと電話するから。今夜がいい?明日?」

「どっちでもいいよ」

瞬は素っ気無く返答した。

「じゃ、またな。オキナワで会おうぜ」

瞬は夏生の自宅前でそう告げると急いで帰って行った。

________________________________________________


「おかえり」

母が帰りの遅い娘を心配してか、言葉の強みを込め[おかえり]と迎えた。

「ただいま」

夏生の家は門限があるので、その時間内に帰れば御咎めを受けることはなかった。

しかし世の中のことを何も知らない娘が、遅く帰ることは親として気が気ではない。

よくある普通の一般家庭では、それが常識なのである。

その夜は夏生は夕飯も食べず、父親とも顔を会わせることもなかった。

頭の中が今日の出来事で一杯だったし、オキナワが待っているかと思うと心がトキメイテしまった。

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瞬はいつものように自宅へ帰るとシャワーを浴び、リビングのアンプとチューナーのスイッチをONにした。

いつものようにソファーに突っ伏したまま気だるい時間が過ぎようとしていた。

ふと、リビングのテーブルに目をやると一枚のメモ用紙を見つけた。


[おかえりなさい。出張が早まったので、私は一足早くに那覇に入ります。泊まるホテルの住所と電話番号です。経路は自分で考えて来てください。お金はいつものように銀行カードに入っています。では・・・]

そう書かれたメモを読み上げると、瞬は目を瞑りこれからのことを想定して、シュミレーションしようとした。

だけども何も繋がっていくような流れを想像が出来なかった。

想像は出来ないでいたが夏生の笑顔だけが瞼の裏に張り付くように、映像が浮かんでは消え浮かんでは消えしていた。



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