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遠い夏の日 第十六話

しかしながら、これが恋なんだと、明確に判断できるものは何もない。

恋に恋する年頃なのが17歳かもしれない。

フワフワ感覚は帰宅後もずっと続いていた。

もう沖縄のトロピカルムードなんて、何処かへ吹き飛んでいた。

夕食時、珍しく父が学校以外の話題を振ってきた。

「夏生。オキナワ行きたいのか?」

「う、ん。そうだね」

「なんだ。行きたくないのか?」

「ううん。わかんない」

「・・・・・・」

「ごちそうさま。もういらない」

会話はそこで終わってしまい、夏生は二階の自室にいってしまった。

「なんだ。アイツ具合でも悪いのか? 母さん」

「多感なのよ。多感な時期ってあるでしょ」

「多感て?」

「多感は多感よ。そっとしておいた方がいいわよ」

「うっうん。そうか」

「お父さん。へそでも曲げられたら大変よ。もう口も聞いてくれないわよ」

「そうなのか」

「そうよ」

「なー母さん。沖縄に行かせて大丈夫だと思うか?」

「大丈夫でしょ。あの子なら」

「そうか。あの子も17歳になったんだな」

「そうよ。17歳なのよ」



夏生はずっと昼間の出来事が、微熱のように冷めないでいた。

[あーなんで。あんなことしちゃったんだろう。声なんか掛けなくてもよかったのに。ずっと見てるだけでいいのに]

恋と憧れは紙一重である。

それを口にすればシャボン玉のように、空高く飛んでいつか割れてしまう。

恋は儚い夢に似たようなものでもある。

[でも。また逢いたいな。何してる人なんだろう。あの人。ちょっと怖そうだけど不思議っぽい。誕生日は? 好きな食べ物は? 好きな音楽は? カノジョとかいたら。あ?んもうダメダメ。悲しくなっちゃう]

切なさと憂いが混沌としてしまう。

[そうだ。沖縄に行っちゃえば少し忘れるかも?]

夏生は階下の両親に沖縄の件を聞いてみた。

「あの。お父さん。沖縄なんだけど」

「あー、そうだったな。知美ちゃんも一緒か。気を付けて行ってきなさい。あちらの親御さんにはお父さんから連絡しておくから」

「ありがとう。お土産買ってくるね」

「う?む」

父、克雄は考え深げだった。

しかしここで頭ごなしに、娘のやりたいことを抑制してしまうと、自分との関係が悪くなる。 

娘を持つ親として通らなければならない試練なんだと自分に言い聞かせた。

その日の夜はモルダウもドヴォルザークでもなかった。

ジョージ・ウィンストンのAUTUMNというアルバムをレコード棚から出してきて克雄はターンテーブルに乗せた。

夏生はレコードジャケットを手に取り曲名を見た。

A-SIDE SEPTEMBER 1Colors/Dance 2Woods 3Longing/Love  B-SIDE OCTOBER 1Road 2Moon 3Sea 4Starsと書かれていた。

夏生は旋律の極めて高い音階だなーと思って聴いていた。

特にLonging/Loveあこがれ/愛が好きな曲だったが、B面のSea海を聴くと切ない感情と、こみ上げる何かが夏生なかに走った。

[どうして、こんなに海を悲しく描いてしまうんだろう]

これから行く沖縄はきっと楽しいはずだと夏生は自分に言い聞かせた。

http://www.youtube.com/watch?v=o_HmDBJwMlo


Longing/Love
http://



「お父さん。ジョージ・ウィンストンていいね。いつも聴いてるオーケストラよりぜんぜんいいよ」

「あ、そう。コレ好きなのか」

「うん。ピアノソロって好きだよ」

[久しぶりに父さんと一緒にレコードを聴いたかも。これって親孝行?]

夏生は少しだけ笑みを克雄に向けた。


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