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遠い夏の日 第十五話

体育館に併設された着替室から出てきた夏生と知美は一階廊下を歩いていた。

「あっ」

「どうしたのナツキ?」

「ううん。なんでもない。先に戻ってて」

玄関の外に見える水のみ場で、上半身を裸で頭から水を浴びてる生徒がいた。

真っ黒に日焼けし、広背筋、大円筋、上腕三頭筋が隆起している。

夏生はすぐに、その生徒が瞬だとわかった。

夏生はドキドキしていたが、夏休みに入ってしまうと会えないので、勇気を振り絞ってそぅっと近づいた。

心臓が鳴るのが自分でもわかるぐらいドキドキしてその場の時間が長く感じた。

彼は首の後ろから頭全体に水を浴び顔を丹念に洗い終わりやっと顔をあげようとした。

「はい」

瞬の頭の後ろから少し大きめなタオルが覆いかぶさった。

「な!?」

瞬はアッケにとられ顔をあげると、踏み切りの女の子がそこにいてニコニコと笑っていた。

[どうしよう!こっち見ちゃったよどーするのよ。ワタシ!?]

夏生は自分でしてしまった行動に躊躇する気持ちが出てきてしまった。

笑っているのが精一杯で内心は心が震えている。

「あ?このまえの」

瞬は頭からびしょ濡れで、ボーっと立ち尽くしていた。

「はい」

消え入るような細くて可愛い声で夏生は応えた。

「えっと。名前なんていうのオマエ?」

「千田。チダです」

「あ。じゃなくて。下の名前」

「はい。ナツキです」

「そう」

「はい」

「オレは」

「知ってます。波間瞬ですよね?」

「そうだけど。あ、そうだ。あのな」

「ゴメンナサイ」

「えっ?」

「いや、あの時うしろで噂話してたの聞こえましたよね?」

「あー。いや、いいけど。あんまり、人の噂話なんかするなよな」

「ゴメンナサイ」

「いや、もういいよ。それに。話してみたかったから」

「え?ホント?」

「ああ。ホント。じゃオレ帰るから。タオル洗って返すよ」

「いいです」

「いいから。洗って返す。じゃーな」

瞬はその場から教室まで行ってしまった。

夏生はポワーンとして何が起こったんだろうと、しばらく立ち尽くしていた。



夏生は自分でも思いがけない突飛な行動をとってしまったと反省しながら、自分が何か不思議な力に操られているんじゃないかと錯覚していた。

[なんだろう。どうしちゃったんだろうワタシ。でも]

足元の地面を伝って足先から頭の中までがフワフワした感覚だった。

数分前の事を思い出すと顔が熱くなった。

[なんだろう。この感覚。キモチイイかも]

下校時間の通学路でもフワフワした感覚は続いていた。

知美が話しかけてもぜんぜん聞こえなかった。

「ねー聞いてるのナツキ?」

「きこえない。きいてない」

「なによそれ。」

「なんでもない。はー」

「なんなのよ。そのため息は?」

「えー。いいじゃん。はー」

「なにソレ。気持ち悪い。変だよー」

知美はいつもようにファーストフード店Mへ夏生と入っていった。

「アイスコーヒー二個とポテトください」

いつものように定番メニューを注文した。

そしていつものように奥の席に座った。

いつもと同じじゃないのは夏生だけだった。

「ちょっとナツキ。どうしちゃったワケ?」

「なんでもない。言いたくない」

「どうして?」

「もったいないから」

「はー!?」

http://www.youtube.com/watch?v=0IPbMVLZX6g


http://



Rush, rush
Hurry, hurry lover Come to me
Rush, rush
I wanna see, I wanna see ya Get free with me
Rush, rush
I can feel it, I can feel you All through me
Rush, rush
Ooh what you do to me
....

店内の有線スピーカーからラッシュが流れ始めた。

思わず夏生はニッコリと満面の笑みを浮かべてしまった。

夏生をジーっと見ていた知美はハっとした。

「ちょっとアンタ。ナツキ、まさかね・・・」

知美も思わず笑みを浮かべてしまった。

「えへへへ。ラッシュね」

「へーそうなんだ。ふーん。ラッシュか」

「えへへへ」

二人は顔を見合わせ底抜けに笑いが止まることがなかった。

「それで?誰?」

知美が口火を切った。

「おしえな?い」

「なによ。この子。まったく」

夏生はこのキモチイイ感覚を、誰かにしゃべってしまうと、消えて無くなるんじゃないかと心配した。

年頃の危なげな思春期は、誰しもが胸に抱く恋への憧れをもっている。

もう二度と戻る事のない17歳という響きがそうさせるのだろうか。

彼女らは今まさに自分たちが17歳を体験しているのだ。

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