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遠い夏の日 第八十六話

辺りは陽が落ち暗くなっていた。

マヒルは夕陽を見せるまでもないと考え、西岸の道を止めて国道507号線を走り那覇へ向かっていた。

コンクリート造りの家々や商店から灯りが見え始めていた。

どことなく暗がりに浮かぶ商店の風景は東南アジアに見える。

東南アジアの田舎が、もしも同じ風景に見えるならば、日本語や英語で書かれた店の看板を中国語に書き換えれば、その店はアジアに点在し世界中にある架橋ファミリーの店と同じだといってもいいくらいだ。

それぐらい風景を丸写しといってもいいくらいに見える。

薄暗くなった車内に、ときおり対向車のヘッドライトが射し込んだ。

幻惑されまいとマヒルは目を細める。

後部座席の夏生と知美は外の風景に目をやっているが、派手なネオンが流線型として流れていった。

東風平町を抜ける前に国道沿いのコンビニエンスストアでマヒルは車を駐車した。

「いってきなさいよ。電話するんでしょ?」

「うん・・」

夏生は駐車場内に隣接された青白くみえる電話ボックスに歩み寄った。

蛍光管の照明に群がる蛾や大きな昆虫が気味悪く、夏生はなかなか電話ボックスのドアを開けられない。

南の暖かい地方では虫も奇怪的に巨大化している。

関東地方で見られない虫を見て良い気分になるのは、夏休みの宿題で昆虫採集してる小学生だけだろう。

夏生は意を決してドアを開けたが、閉めずに置いてある電話帳のページをめくった。

[ホテル日航那覇グランドキャッスル]で目を止め、プリペイドカードを刺し込みプッシュボタンを押した。

トルルル・・・・ガチャと、ワンコールで電話は繋がった。

「オデンワ アリガトウゴザイマス ホテルニッコウナハグランドキャッスル デゴザイマス」

落ち着いた声の女性が受話器の向こうで、恐らく今日は何度となく同じ台詞を言ったのか決まりきった言葉を夏生にも言った。

「すいません。708号室のナミマシュンさんをお願いします」

「ハイ ソチラサマ ノ オナマエ イタダケ マスカ?」

「千田です」

「ウケタマワリマシタ ショウショウ オマチクダサイ」

外線から内線機へ交換手が繋げたのかコール音が聞こえた。

トルルル・・・・トルルル・・・・トルルル・・・・トルルル・・・・トルルル・・・・トルルル・・・・トルルル・・・・トルルル・・・・トルルル・・・・トルルル・・・・

1分ほど待ってみたが、誰も受話器を上げることは無かった。 


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テーマ : 自作連載小説
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