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ビーサンとハイヒール 第一話

「さようなら・・・・ごめんね・・・ワタシ・・」

そう呟きながら恵子は、手に持ったガラス瓶の中身を海に流した。 

白いトレンチコート姿の彼女は、艶やかに程よく毛先をカールさせ、風が吹くたび甘いヘアコロンを何処かへたなびかせている。

葉月の季節は、どこか悲しげに映る。

街路樹の枯葉がカサカサと音をたて、排気ガスとともに舞い、そして角へと追いやられる。

夏が来ると表現するならば、秋は何処かへ行ってしまう、そんな憂いが胸を締め付ける。

夜長に想い耽るなら、万葉集の一説でも憶えればいいだろう。

万の言の葉、多くの言の葉=歌を集めたものとされる万葉集だが、万葉とは多くの葉との意味もある。

つまり誰かに唄った歌集だが、それも何処かへ追いやられ、いつしか忘れ去られるのだろうか。

夕暮れの陽が傾く頃は白いトレンチコートも橙色に色付き、光沢を帯びたギャバジンが後ろの壁と同化している。

暫らくのあいだ、彼女は行き交う漁船を眺めていた。

まだ明るさを残す空を見あげ、そしてユックリと歩きだした。

すらりと伸びた長い足にフィットしたハイヒールが、硬く粗いコンクリートの地面をコツコツと音を響かせる。

大きい倉庫が並んでる先に、真紅のアルファロメオ・ジュリエッタが停まっている。

ドアを開き、コートの裾を直しながら、シートに深く座り身を預けた。

助手席に置いてあるマリークレールを手に取り、パラパラとめくり後ろのシートに放り投げ、イグニションを回しアクセル踏みながらクラッチを確実に繋いだ。

2速3速とジュリエッタは加速していった。

後方から目視すると姿が小さくなっていき、上り勾配から下りになり消えた。

少し離れた場所にマーク?ステーションワゴンは停まっていた。

持ち主はサングラス越しに恵子の行動を一部始終見ていた。

サングラス姿のマーク?の持ち主は、暇を持て余しているようだった。

誰かと待ち合わせているのかツマラナイ景色をただ見ているだけで、恵子が立ち去ると再び彼には長い時間がやってきた。


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ビーサンとハイヒール 第二話

男はウトウトと狭い運転席で寝入ってしまった。

シートを倒し背中から受ける車の振動が、彼を心地よい眠りに誘ったようだった。

彼は目をユックリ開けたが、風もない港は音も静まり返り、吸い込まれそうな暗闇だった。

身体を起こし、カーコンポーネントの淡いグリーン色したイルミネーションに、オメガ スピードマスターブルーを翳してみた。

ブルーの文字盤は、あと少しで21時をまわるようだ。

男はため息をつき、そして目を瞑った。

5秒ほどそうしていたが目を開け助手席に手をやり、放置してあった携帯電話を掴むと、アドレス機能からスクロールしていき短縮ダイヤルで電話をした。

コール一回で相手は電話に出た。

「はい・・・」

ハスキーで鼻のつまったような女の声が、受話器越しで返事をした。

「・・・・・・」

男は何も言わなかった。

「今、何処にいるの?」

女は男に質問した。

「何処でもない・・・今日は逢わないことに決めた」

「どうして? 待ってるのよ・・・」

「今日は・・・疲れているから・・・」

「そう・・・残念ね・・・」

女は、そう言うと電話を切った。


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ビーサンとハイヒール 第三話

男は欠伸と一緒に狭いシートで伸びをした。

再びシートで眠ろうかと思うほどダルい感覚を身体に覚えていたが、このまま朝まで寝入り朝を迎えるのは憂鬱だと考えエンジンを始動させ車を発進した。

男はまだ眠気があるのか、ハンドルを握る手に力が入らないのが気になった。

海岸付近から二宮インターチェンジで小田原厚木道路へ車を乗り入れ、更に東名高速道路をマーク?ステーションワゴンはひた走り都心へと向かった。

速度は80キロから100キロをスピードメーターが示している。

マーク?ステーションワゴンをローライドスタイルにするため、友人の自動車工場でカヤバ製のショックに変えてみたがゴツゴツした感じがシックリこない。

アクセルペダルを踏み込み加速感を楽しんでみたが、120キロ付近でハンドルが小刻みに振動し始めた。

振動は続き徐々に大きくなった。

このまま走り続け加速すると操作できなくなると男は思い、アクセルペダルの右足を少しずつゆるめた。

「ヤバイな・・・」

男は独り言呟いた。

港北パーキングエリアに入り、携帯電話のボタンを押し始めた。

長い間、呼び出しコールが続き、やっと相手先が出た。

「オレだ。ダメだわ・・・ホイールバランス崩れているぞ。 今、港北だから市ヶ尾からニーヨンロク乗ってそっち向かうわ」

男は、ぶっきら棒に一気に相手先に、自分の意思を伝えた。

「冗談ヤメロヨ。 もう店は閉めるからな・・・それよりオマエ、あの話どーなったんだよ・・・例の・・・」

相手先は来店には応じなかったが、話題を変え男に事の始終を聞きたい様子だった。

「その話か・・・今夜は断った。 聞きたいのかオマエ? じゃあ店じまいしとけよ・・・オレの車をガレージに入れるからタクシーで出ようぜ」

男は一方的に相手に用を伝え、電話を切った。


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ビーサンとハイヒール 第四話

[CORSA]と書かれたオーニングが店の街灯で美しく浮かび上がりイタリアンカラーがハッキリと見える。

[CORSA]はオートバイ専門のチューンナップショップとして成り立っているが、イタリア車輸入代行業及び車に関するドレスアップも請け負う店としてマニアな客にはウケが良い。

男は用賀料金所を出て国道246号線の玉川通りを走りCORSAにやってきた。

ガレージ一台分のスペースに上手くマーク?滑り込ませエンジンを停止した。

従業員3人は仕事を切り上げ時間通りに退社したが、オーナー社長の佐伯翔太だけが自分のデスクで待ち人である友人の男を待っていた。

「ようっ・・待たせたな」

男はガレージ奥の安っぽいアルミサッシのドアを開け佐伯に声をかけた。

「ったく・・・オマエな・・ま?いいや・・店閉めるから外に出て待ってろ」

佐伯は男にそう言うと店内の電気を消し始めた。


二人は通りで流しのタクシーを停め乗り込み、運転手に「三宿」と告げると、例の・・話の続きを始めた。

「それでオマエどーするんだ?」

佐伯が男に切り出した。

「うむ・・・どーすると言われてもな・・・」

男は返答に困った様子だった。

「一応オマエには義務があるだろう?」

「義務か・・・義務と言われれば、そうかも知れないが・・・」


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ビーサンとハイヒール 第五話

二人は三宿で老舗になりつつある[春秋]の、一階側カウンター席に座った。

洒落たレストランバーで二会席をダイニング「春」の居酒屋、一階をバー「秋」という名前にした造りだ。

「俺はMaker's Mark、こいつはJIM BEAMでロックを」

佐伯は男の好みも聞かず、勝手にバーボンを注文した。

「佐伯・・・オマエなら、どうする?」

男が佐伯に切り出した。

「どうって・・・オレは独り者だ。オレにはオマエの心境なんてわからないよ・・・だがな、オマエには産まれてきた子供への責任と、産んだ女との家庭を築くっていう責任があるだろう・・・」

佐伯は男に、自分の子供なら認知し、女と家庭を築けと説得しはじめた。

「うん・・・いや・・・本当にオレの子供なのかって疑問が、まだ残ってる・・・」

男は腑に落ちない点があり、決めかねていると言った。

「そうか・・・オマエには、まだ信用できないのか・・・」

佐伯はグラスの酒が氷で薄まらないていどに、一口だけ飲んだ。

男もつられて同じように飲んだ。

「ふっ・・・今日、電話だけはしたよ。 アイツ・・・残念だと言っていたよ・・・」

男はまるで自分が、当事者じゃないかのように、鼻で笑いながら言った。

「まぁ・・・他人のオレが、とやかく言うことじゃない。 後は自分で決めてなんとかしろよ」

佐伯はグラスに残った酒を一気に飲んだ。

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